さざなみ(45 YEARS)を観て
映画、「さざなみ」を観た。
イギリスの田舎町に暮らす子供のいない老夫婦、ジェフとケイト。
結婚45周年目の祝賀パーティを数日後に控えたある日、50年以上前に山で遭難したジェフの元恋人カチャが発見された。
温暖化で雪が解けて発見されたため、若い頃のままだ。
現地警察はそれをジェフに確認をして欲しいというのだ。
不用意に「ぼくのカチャ・・・」とジェフが口にした時、ケイトの心は軋み始める。
ケイトは会ったこともないカチャへの嫉妬から、ジェフを詰問し、「遭難事故がなければカチャと結婚していた」と言わせてしまう。
二人の距離がどんどん離れていく。
その後、お互いに関係を修復する約束をし、祝賀パーティでジェフから「君と出会えたことが人生一番の幸せ」と愛を語られても、ケイトの心は晴れない。
それどころか、ダンスの最後にジェフの手を冷たく振り払ってしまう。
嫌悪感から我慢しきれず、、、それが正解だろう。
そこでエンド。
この時のシャーロット・ランプリングの表情は、おどかすほどに魅力的だ。
例えば、「マディソン郡の橋」のメリル・ストリープが、家族を置いてキンケイドと一緒になるかどうかを悩むあの表情。
例えば、「ひまわり」のソフィア・ローレンが、戦地で別の家庭を持った夫と現地の妻の姿を見てすべてを悟ったあの表情。
そんな名演技に匹敵すると、個人的は感じた。
無神経さから妻を傷つけたと悟った後の、トム・コートネイ機嫌の取り方もなんて自然なんだろう。
彼もまた素晴らしい俳優だと思う。
真率に語る竹宮惠子 「少年の名はジルベール」を読んで
竹宮惠子と聞いて「あ、風と木の詩の人だ」「24年組の人だ」そうピンとくる人も多いと思う。
その彼女が自伝として出版した「少年の名はジルベール」がとても面白い。
面白いというより、自らを余すところなく披瀝する語り口に感動すら覚えた。
内容はざっとこんな感じ☟
・トキワ荘の女性版とも言える「大泉サロン」について。
なんと間取りまで公開しており、萩尾望都との共同生活が、まるで昨日のことのように初々しく書かれている。
・少年と少年の物語の着想から出版に至るまでの10年。
その間、同居している天才萩尾への嫉妬と羨望が混在し、苦しみもがく竹宮。
それを象徴するエピソードがある。
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重なる木々の間を少女が歩く。
そんなシーンを読みながら、あっ、と気づいた。
折り重なる枝の葉にその形を伝えるラインがなかった。
縦の斜線のみで描かれている。
葉を示す輪郭線がない。
輪郭がないままに葉が描かれていて、その葉の集合体が、茂みのように見える。
さらにその茂みに見える葉の集合が絵の奥のほうに向かうにつれて輪郭がぼやけ、
遠近を感じる深い森になっている。
本当に緑の深いところにいるのだなとわかるような背景を描く。
深呼吸したくなるような緑の空間。
そこに流れる風さえも感じることができた。
圧倒された。
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竹宮もまた画力を誇る漫画家であるために、
ひとひらの葉っぱの新しい表現に圧倒されたのだろう。
これは、手垢のついた手法ではなく「創造」に等しい。
たいへんなショックだったろうと思う。
結局、大泉サロンは竹宮が心身のバランスを保つために解散された。
その後、新しい担当が「少年の物語」を出したいなら、それをずっと反対している編集者を納得させるために、まずは別の漫画で人気1位を取るべきだと励ます。
その理路整然とした提案に竹宮は納得し、スランプを跳ね飛ばし、少年誌でも活躍し、
念願の「風と木の詩」をこの世へ送り出す・・・と、ま、そんな内容。
後に、友人であり、漫画家として同格だった竹宮を
自分の才能が苦しめていたことを知った萩尾望都の気持ち。
それも切ないですね。
きっと、もう一度、いや2.3度は読み改めるだろうと予感する良書だ。
特に若い人に竹宮さんは読んでほしいのだろう・・・。
「風と木の詩」を生み出すために描かれた「ファラオの墓」「テラへ」も合わせて読んで見たいと思う。
昔、観た時は「?」、いま観たら「!」な映画
「たくさん賞を取ってるらしいけど、よくわからないな~」
若い頃に観た名作の中には、そう感じたものも少なくない。
感受性が強いわりに、経験が少なく、人間が未熟なのでそりゃ仕方ないw
そんな中、最近「!」となったのは、
クリント・イーストウッドの「許されざる者」だ。⇦概要はここから。
この映画全体に棚引く、孤高の美しさはどうだろう。
勧善懲悪=ウソで固めた西部劇をぶち壊し、
いわゆる全くの善人なるものが不在という超・現実感。
イーストウッドってやはりスゴイんですね。
結局、誰が許されないのか?
・・・しばらく考えていますが、
結局、全員かも?とか、
誰かというより行為の限界の事かも?なんて感じる私です。
※吹き替えはオソマツです。字幕で見て欲しいです。
※やはり、ウイスキーを飲みながら見ると雰囲気出ますね。